これからの季節、「ワキ汗」が気になるという人も増えてきます。
時として、手汗やワキ汗は日常生活に影響を及ぼしますが、「体質だから仕方がない」と諦めている人もいるのでは?
また、「病気なのか」「どこに相談したらよいのか」が判らない人も多いよう。
実は、そんな悩みに応えてくれるサポート体制が整っているのです。
今回は先日、科研製薬株式会社とNPO法人多汗症サポートグループによって開催された「ワキ汗・多汗症」に関する啓発セミナーのレポート。
心当たりがある人必見の内容です。
目次
周囲の人に相談しづらい汗の悩み。
特に多汗症は病気ととらえる人が少なく、工夫や対策でしのいでいる人も多いのではないでしょうか。
国内で多汗症に悩む人の数は720万人にのぼり、20人に1人の割合で存在すると言われています。
今回のセミナーでは、ご自身も多汗症を経験し、多くの多汗症患者さんを診察してきた池袋西口ふくろう皮膚科クリニックの院長藤本智子先生が、汗と多汗症について教えてくれました。
普段私たちがかく汗は、エクリン腺という全身に分布している汗腺からでる水分のこと。
ニオイの強いワキガはアポクリン腺というワキ、デリケートゾーン、乳首など局所に存在し、多汗症とは別の症状です。
エクリン腺からでる汗は無臭。
汗をかいて時間が経ち、肌に存在する雑菌が繁殖するとニオイを発生します。
哺乳類の中で、汗をかくのは私たち人間と一部の猿の仲間だけだそう。
人間が長時間マラソンを走れるのは、汗を大量にかけるから。
体温調整をするために汗はとても大切な存在です。
汗腺の数や大きさの個人差はなく、お母さんのお腹の中で発達し出産時には完成しているとのこと。
生まれて約2年の環境で、汗をかきやすいか、かきにくいかが決まるとされています。
確かに、気温が高く湿気の多い地域の人は汗をかきやすく、逆に寒い地域の人は汗をかきにくいですよね。
今回のセミナーで取り上げられたのは「原発性局所多汗症」について。
少し難しい言葉ですが、頭部、顔、ワキ、手、足などの部位から、滴り落ちるほど汗が出てしまう人のことをさします。
この多汗症は日常生活で支障をきたすほど。
手の場合だと、握手ができない、PC・モバイル全般に支障がおこる、試験の時に答案用紙が濡れてしまうなどのケースが想像できます。
夏でもカーディガンを羽織り、袖にワキや手の汗を吸わせて対策している高校生もいると聞きました。
主に、汗で困る年代は20~40代。
新入社員やビジネスで緊張する場面が多い社会的に活躍する世代が、悩みに直面しています。
特にワキ汗は、好きな洋服を着られない、異性と接する時に気になる、就きたい職業をためらってしまうなど、著しく生活の質(QOL)を下げてしまいますよね。
それは、他の皮膚疾患(皮膚炎・湿疹、乾癬、アトピー性皮膚炎など)と同等もしくはそれ以上とされています。
日常生活への影響が大きく、心身ともにダメージが大きいにもかかわらず、社会的な認知度が低く、周囲からの理解もされにくいため、多汗症は「サイレント・ハンディキャップ」とも呼ばれているのだとか。
この調査結果や実態から藤本先生は、「ワキの多汗症は病院で治療が可能な疾患。保険適用の塗り薬や内服薬もあり、治療の選択肢が広がっていることを多くの人に知ってもらいたい。」と話しました。
「NPO法人多汗症サポートグループ」の黒澤理事長は、ご自身も多汗症。
7年ほど前に、足裏の汗が原因で階段から滑り落ち、尾骨にヒビが入ってしまったそう。
多汗症を工夫しながらナレーションの仕事や着物モデルをつとめていた経験があります。
自分だけでなく、若い人たちが多汗症の悩みを打ち明けても受け入れてもらえない「サイレント・ハンディキャップ」を抱えていることを広く知ってもらうため、今年4月にNPO法人を設立。
今後は、SNSや公式サイトで多汗症の情報を発信し、患者同士のコミュニケーションの場を作っていきたいと語りました。
セミナー後半では座談会が行われ、ワキ汗患者の代表として「NPO法人多汗症サポートグループ」理事の高部さんも加わり、実体験を語りました。
高部さんもアルバイトを選ぶ時に、飲食の接客業を諦めた経験があるそう。
自然と滴り落ちてしまう汗が、お客様に不衛生な印象を与えてしまうと考えたためです。
何件も病院をまわってたどり着いたのが汗の専門家、池袋西口ふくろう皮膚科クリニックの藤本先生でした。
「今では、季節や気温に合わせて塗り薬や飲み薬を活用し、ある程度自分の汗をコントロールできるようになった」と話す高部さん。
「様々な治療の選択肢が用意されていることを多汗症で悩む多くの人に知ってほしい」と締めくくりました。
座談会の最後には、多汗症で悩む人たちに向けてメッセージも。
藤本先生は「汗らず、自分らしさをとり戻す!!」
黒澤理事長は「1人じゃないよ」
高部さんは「多汗は多感」
と、応援の言葉を贈りました。
科研製薬が運営するワキ汗の悩みサイト ワキ汗治療ナビは、「私は、汗らない。」がキャッチコピー。
セルフチェックシート、専門医の検索が可能です。
また、公式SNSではその日の気温や湿度による汗かき指数を発信。
服装選びや持ち物選びの参考にになります。
NPO法人多汗症サポートグループでは、メールマガジン、オンラインでの配信、小学生向けのパンフレットを作成し多汗症患者が生活しやすい環境づくりに向けて活動。
SNSでも情報を発信し、個人が制限なく本来の力を発揮できる社会を目指しています。
なかなか人に相談できず、理解もしてもらえない汗の悩み。
自分だけでの対策には限界がありますよね。
これからは1人で悩まず、専門の病院やサイトで相談してみてください。